パーマカルチャーの倫理・原則

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パーマカルチャーの倫理・原則

●パーマカルチャーの倫理

倫理とは人間が自らの自由を実践するために、自らの過剰な欲求を統御し、正しく身を処すために、自らに課す行動基準と定義されます。自らの欲望のみに従い行動すれば、それは、多くの場合、他の人の自由の束縛や権利の侵害となり、社会的な制御を受け、自らの自由を失うことになります。

他の人々、ひいては社会全体や自然そのものが望むことは何であるかを知り、それを実現するために自分が何をすることができるのかと考え、それを自らの望むこととれば、その望みは他からの干渉や制御を受けることなく、実現されることでしょう。それこそが自由を実践することになります。

パーマカルチャーはこのような自由のための倫理を以下の4つに要約し、デザインや実践の基準とすることを求めています。

自己に対する配慮

人間が、正しく身を処し、自由を立派に実践するために、自らを知り、形成し、人を駆り立てかねない欲望を自らの中で統御することです。

地球に対する配慮

地球とは,生命が自らの手でより多くのいのちが生きることができるようにと育んで来た宇宙においても希有の星と考えられます。そして、「森」こそが最も豊かないのちに満ちた場です。無限とも言える多くの命が助け合いながら育ち、そして育てて行く森を人間が手を添えながら完成させて行く事こそ地球に対する配慮と考えられます。

人に対する配慮

人の基本的な生きるための要求(生理的欲求、精神的欲求、社会的欲求)を満たすばかりではなく、文化の生成に参加し、自然をより豊かにして行くことで、人の最も根本的な要求である自己を超えた存在との一体化を実現し、永遠を実感する機会を保証すること。

余剰物の共有

自然との恊働としての生産活動に参加することで、自然から必要を超えた恵みを受け、それらを他の人々と共有することで自分の生活の安定と相互の助け合いによる安心感を得ること。また、人間一人一人が持つ独自の才能を自分のためだけではなく、他の人そして、広くは社会のために用いることで、より豊かな社会を築いて行くこと。


●パーマカルチャーの原則

パーマカルチャーの原則とは、自然の中に存在する、自らを永続可能にする様々な仕組みを表したものです。パーマカルチャーの創始者の一人であるビル・モリソンは山の猟師、海の漁師として半生を過ごしてきましたが、そこで見出したのは、自然が豊かな生命に満ちているだけではなく、より豊かにしていくための変化を常に起こし続けているという動的な姿でした。彼はそこに働く基本的な自然のあり方を、パーマカルチャー=永続可能な文化の創造へと導く仕組み=原則として、明らかにしています。

これらの原則は、以下のように大きく4つに分けることができますが、それらの意味合いは独自のものであり、自然や文化から離れてしまい、自然からの語りかけを受け取るという経験やそれに基づいて動くという基準を失ってしまった、私たち現代人に、もう一度、自然の見方と私たちと自然の生産的な関わり方に目覚めさせてくれるものです。

循環性

生物が最初に作り出した永続へとつながる仕組みは、この循環性だったと考えられます。光合成と呼吸という太陽から与えられるエネルギー以外は何も消費されることがない循環は、生物が自ら作り出したものですが、永続性を具現化したもっとも基本的な仕組みということができるかと思います。

それ以外にも、生物にとって決定的に重要なタンパク質を生成し、また、分解する窒素循環や、食物連鎖もそこに関わる有限な物質が消費されるのではなく、元に戻るという生物を介して形成された循環系です。

この循環の当然の帰結としてのもう一つの特徴は、ゴミがでないということです。このため、環境に対して負荷をかけることもありません。単純化して言えば、ゴミ=資源となる仕組み、すなわち、あるシステムから出されるアウトプット(ゴミ)が他のシステムのインプット(資源)となり、それらのシステムが一つの輪になって、どこからもゴミが出ることもなく、また、資源が足りなくなることもないのがこの循環性です。

多重性

多重性とはその字の通り幾つかのものを重ね合わせることです。自然も文化も様々なものを重ね合わせることで、豊かさと安定性、そして、持続性を確保してきたと言えるでしょう。その中でも以下の3つの視点から多重性の意味とその役割を考えてみたいと思います。

【1】空間の多重性

自然の最も完成された形である、森には様々な植物が茂っていますが、それらを観察すると、3次元の空間をうまく使って棲み分けているのが見られます。一般に、生態学ではこのような植物の棲み分けを5層として、地面に近いところから、地衣類、草類、低潅木類、亜高木類、高木類と分類しています。自然界では、生物同士の関係性は競争よりも共存を基本としていますが、それは、このような空間的な、高度による棲み分けにより行われています。

パーマカルチャーでは、これらに、ツタ類と根菜類を加えて、空間に7層を設けて、生産性が高く、かつ共生する生態系を作り上げることを目標としています。

【2】時間の多重性

時間は過去から未来に向けて一方向に流れていて、どの場所にも同じ時間が訪れ、去っていきます。このため、時間を重ね合わせることをイメージすることは難しく、実践することには戸惑いを覚えます。しかし、自然界では、様々な形で時間が重なりあっています。

例えば、秋に散った落ち葉は、やがて朽ちて、土に帰り、他の植物を育てる栄養分となりますが、その間は、落ちた種を守っています。春先に土を覆う落ち葉をめくってみると、すでに種から芽が出ているのに出会うことがあります。朽ちて分解していく時間と新しい命が育まれる時間がここで重なっているわけです。このような時間の重ね合わせを読み取り豊かな畑を作っているのが福岡正信氏の農法だと解釈することもできるかもしれません。

その他にも、この時間を重ね合わせて豊かにするという視点で見ると、本を読むことや語り合うことも時間を重ね合わせることと考えられるでしょう。書物の中にある文字が伝えることや人と語り合うことで相手から受ける言葉はすべてそれを発する人たちの時間が込められています。そのような時間を取り込むことで私たち自身の内容は豊かになっていきます。

【3】機能の多重性

 3-1 多機能性

多くの生物、特に進化した生物は必ず多くの機能を果たすことができる多機能性を備えています。例えば、鶏であれば、卵を産むことだけではなく、虫を食べたり、地面を引っ掻いて後期したり、それに糞を出して土を肥やすこともできます。このように自然を構成する個々の要素に多くの機能があることで、自然の中には多様な環境が生まれて、より多くの生物が生まれ、生きることができるようになります。また、このような多く機能を果たすことで生物自体もストレスなく生きることができます。

また、生物でも無生物でも、一つのものに多くの機能を持たせることで、一つの機能だけしか果たせないものを多く集めるのに比べて空間を大幅に節約することも可能です。パーマカルチャーのデザインでは、そのデザインを構成する要素に少なくとも3つの機能を持たせることを考えます。

 3-2 重要機能のバックアップの用意

これは生きていく上で欠かすことのできないことやものには複数のバックアップを用意するということです。例えば、水であれば、現代人のほとんどは、水道以外に水源を持ってはいないと思います。しかし、地鎮などの災害が起き、水道管が破裂するような事態が生じてしまえば、生きるに欠かすことのできない水の供給が断たれて生命の危機に陥ってしまいます。雨水タンクを設ける、あるいは予め井戸を掘っておくなどしておけば、水道が断水になってもすぐに生命の危機にさらされることはありません。

このように食べ物や、水、職業などについても安定した生活を営んでいくには複数のバックアップを持つことが必要と考えられます。

多様性

多様性は、ただ互いに異なる存在が多数あることを指すのではなく、個の内的な多様性と環境の多様性、それらを結びつける関係性により構成されます。多重性のところでも触れましたが、生物は基本的に多くの機能を持っています。ただ、これらの機能は他の生物を含む環境にそれを発現する条件が用意されている時に初めて具体化します。

すなわち、パーマカルチャーの多様性とは、そこに存在するすべての生物が持つ機能の把握し、それらが十分に働くことを可能にする多様な環境を作ることで生じる動的な多様性をさしています。

★エッジ効果

このような多様性を生じさせる手法として、エッジ作りがあります。これは互いに異なる環境を隣り合わせに準備することで、意図した以上に多様な生物が生きることが可能になる環境を作り出すことができます。自然の中にあるその例としては湿地が挙げられるでしょう。川や湖などの水という環境と陸の環境の接するところに生じる湿地ではもちろん水中に住む生物も陸にいる生物もやってきますが、そこにしか住むことができない生物もやって来るので、極めて多様な生物が生息しています。このようなエッジは意図したよりも多様な環境条件を作り出すので、多様性の創出には最も適した手法と考えられます。

合理性

より多くの生物の命をはぐくみながら、しかも、人の行為において無駄を省くことが合理性の基本と考えられます。それを具体化するためには2つの手法が考えられます。ゾーニングと自然資源の利用です。

【1】ゾーニング

人間から自然に向けて、グラデーション的な土地利用を行うことを意味しています。即ち、図にあるように、人間が最も時間を多く過ごす場所を中心とし、人間の立ち入ることがない自然のままの場を周縁として、その間を人間の介入度を基準にゾーン分けしていく手法です。

生活の場であれば、家を中心として第1ゾーン、菜園など頻繁に行く場所が第2ゾーンとなる。日本のように居住地の敷地面積が少ないところでは、この2つのゾーンを持つことが精一杯と考えられますが、昔の農家程度の規模があれば、更に水田や鶏小屋それに果樹など1日に1度行くところが第3ゾーンとなり、あまり手をかける必要のない燃料や建材のための人工林が第4ゾーンとなります。第5ゾーンは自然のままにしておくところです。

この様に人間と自然の間のバランスを設定すれば、自然に対する人間の介入が際限なくなることを避けることが出来ると同時に、野生動物が菜園を荒らしてしまうことも少なくなります。何よりも、人間の移動のための時間やエネルギーも極力省くことが出来るので、無駄を省いて効率的に生産活動を行うことが出来るようにもなります。

【2】自然資源の利用

もう一つの合理性を具体化する手法は、自然資源の利用です。これは、もっと動物や、昆虫、植物などの自然の生物の力を人間のために利用しようという考え方で、彼らから搾取するのではなく、どちらにとっても利点があるように人間が知恵を働かせる手法をさします。

鶏を持ち運びできる小屋にいれて移動しながら畑の除草と除虫、そして糞による施肥行わさせるチキントラクターや果樹の根元に通路を作って鶏に果樹を管理してもらうこりドールなどもパーマカルチャーの手法としてよく知られています。

また一般にコンパニオンプランツと呼ばれている植物の組み合わせも、科学と言うよりはむしろ長年の工夫や経験を集積した、言い伝えとも言うべき手法ですが、植物を使って人の手間を省くことができる、自然資源の利用方法の一つです。